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本当に必要とされるスキルとは? 第2弾 哲学と認知力について

こんにちは。今回も論文「THE FUTURE OF SKILLS. EMPLOYMENT IN 2030」(以下2030年のスキル)について第2弾として紹介します。前回の記事で第1位のスキルである “Learning Stragegies”「戦略的学習力」を展開するには「考え、実行する力」が必要であると書きました。今回はこの考える力のベースとして第12位の「哲学」について考えていきたいと思います。ちなみに「戦略的学習力」が第1位なのはあくまでUSの人材マーケットです。UKでは第1位は ”Judgment and Decision-Making”「判断力・決定力」で(USでは20位)「戦略的学習力」は第4位となっています。「判断力・決定力」もやはり哲学的思考が重要なベースの一つとなりますね。日本でランクを付けるとすると哲学はもっと上位にあがると思います。この論文では哲学は「哲学・神学」としてカテゴライズさていますが、神学も多分に哲学的な「人間はどう生きるか?」的な考察に重きを置きますので、神学的アプローチが希薄な日本ではこのあたりの思考ベースが脆弱な気がします。では1.哲学の力、2.もう一つの基本的能力、3.まとめの3つのパートに分けて紹介していきます。

哲学の力 考える力

前回の記事で「戦略的学習力」を「絶えず観察し、考え、実行する力」と半ば強引に定義しましたが、この能力を身に着ける為に哲学が役に立つというのが今回の記事の趣旨です。「神学」はちょっと別にして「哲学」は社会学等とも密接に関係していて守備範囲も広いので、学問の「哲学」ではなく、「哲学的」アプローチとして捉えることがより包括的で有効と思います。2位にランクしている「心理学」も「人はどう考えるか」という意味では源流は同じですね。

では具体的に哲学がスキルの獲得にどう役立つかを考えていきたいと思います。この論文はAIの台頭により雇用環境が変化する、という前提で書かれていますが、このパラダイムの変化を受け入れ、消化する力をくれるのが哲学と思っています。というのは哲学はシンプルに私たちに考えることを求めるからですね。哲学的なアプローチにはいろいろありますが、基本的なアプローチをいくつか押さえておくだけでも十分訳に立つと思います。ビジネスや人生設計という観点から書かれている「武器になる哲学」という書籍をこのブログ紹介していますが、わかりやすく且つ実用的に書かれていてお勧めです。

beglobalperson.hatenablog.com

 ただ例として一つの思考的アプローチである「脱構築」を日々の思考に当てはめていくとしても、これで頭の中が霧が晴れるように整理されるわけではなく、ひたすらに地味な思考を続けるしかないですね。私の場合、「下手な考え休みに似たり」でやたらと時間がかかる上にうまくいかなことが多くて、時として時間を無駄にしているようでしんどいですが、人生に直面するための基本スキルでなのでしょうがないですね。ささいなことですが、まずGoogle先生に聞く前に自分で考えてみる、ことも大事かもしれません。

ちなみに哲学というと文学部の特定の学問分野という感を受けますが、私は現代・今後の社会では必須のリベラルアーツの一つと思っています。また、いろいろな学問とクロスオーバーしているので、それらを理解するベースであると考えています。元々のリベラルアーツは文法学、修辞学、論理学、算術、幾何学、天文学、音楽の4つで、哲学は修辞学、論理学(弁証法)を含みます。現代のリベラルアーツの定義は現代ではもっと一般教養的な学問である科学、コミュニケーション、経済学、哲学などいわゆる一般教養ですね。大学では一般教養をナメてましたけど、やはり大事なんですね。教えている側がそれを理解しているかはともかく。

もう一つの重要な能力「認知する力」

この「2030年のスキル」論文は120ページもありますので、全部読むのは大変なので、部分的にしか見ていませんが、論文中にキーワードとして何度も登場する単語があります。”cognitive”「認知」です。この言葉も思考やスキル形成の上で非常に重要な能力(スキル)を示唆していますので、この言葉がどういう能力を示しているかを考えていきたい思います。論文ではEXECUTIVE SUMMARY(ビジネスでは報告者へ対する「要点をまとめた概要」)導入部分とCONCLUSIONS(結論部分)にも何度も使われており、「戦略的学習力」が11回登場するのに対し、”cognitive” という単語が26回も登場しています。訳は論文の主旨に沿ってかなり意訳していますが、参考に抜粋しておきます。

https://futureskills.pearson.com/research/assets/pdfs/technical-report.pdf

EXECUTIVE SUMMARY

More generally, we shine a light on the skills that are likely to be in greater demand, including interpersonal skills, higher-order cognitive skills, and systems skills. 

(訳)「さらに一般的にみて、対人スキル、高次認知スキル、システムスキルなどのスキルに対する需要が大きなっていくことが明白となった。」

CONCLUSIONS

In the UK, the findings support the importance of 21st century skills too, though with an even stronger emphasis on cognitive competencies and learning strategies. System skills –

Judgment and Decision-making, Systems Analysis and Systems Evaluation – feature prominently.

(訳)「UKではこれらの結果は21世紀のスキルの重要性をサポートしているが、「認知的行動特性や戦略的学習力」にさらに重きを置いている。判断や意思決定、システム解析、評価などの「システムスキル」は卓越したスキルとなる。」

 ではこの”cognitive”というキーワードについて考えていきます。ビジネスや口語ではほとんど耳にしませんが、TED Talks等にもよく登場しますのでアカデミックな場面でよく使われるのかもしれません。そのまま訳すと「認知スキル」となります。O*NETでは ”Abilities that influence the acquisition and application of knowledge in problem solving” と説明されています。「問題解決するための知識の取得や応用に影響を与える知識」、意訳すると「問題解決をする為の本質を見極める知識」になるでしょうか。これはいわゆる「観察、考える、応用する力」にと言えると思います。この点については当ブログのTED Talks「TED Talksで学ぶ英語とこれからの「動機付け」について」で紹介していますが、ここでは将来必要とされる問題解決能力として、「ロウソク問題」を例に挙げ ”rudimentary cognitive skill”(初歩的認知スキル、周辺を観察するスキル)が必要であるとプレゼンされています。

beglobalperson.hatenablog.com

  O*NETではこの能力はさらにサブカテゴリとして21個の至極基本的な能力、例えば聴く力、話す力、記憶力などがリストされています。これらは誰にでも必要なスキルであり、結局は汎用インテリジェンスが必要ということになりますね。

https://www.onetonline.org/

まとめ 考えながら自分の汎用的スキルを作っていく

以上、「2030年のスキル」より「哲学」、また別のキーワードとして「認知力」に焦点を当てて考えてみました。「戦略的学習は」多少私の解釈が違うところもありますが、論文に出てくるスキルは過去でも今でも必要なものばかりです。あえて自己実現を目標とするスキルと解釈するなら大昔から必要とされているスキルばかりですが、この論文のようなまとめ方は気づきを促し自分のスキルを考えるときに大変参考になりますね。また、この論文の冒頭部分でもあるように「雇用構造の変化に対応するために、Policymakers(政治家)や教育機関に対し変革を促している」ことも意義深いですね。しかしながら日本は行政のスピード感から何かをしてくれることは期待できないので、まずは自分で地道に準備していくしかないですね。私はまず基礎の一つとして考える力、哲学を重点を置きビジネスや日常生活で本質を考えることを気を付けています。理由はパラダイムの変化に対応したり、マインドセットするなど自分が次の次元に進むための地力を養えるからですね。自分なりのカスタマイズされたスキルを揃えるのはもう少し時間がかかりそうです。定年に間に合わないかもしれませんが(笑)、定年後こそスキルが必要であるとも言えるかもしれません。

また、このリストされている個別のスキルという言葉に縛られて一般的な「スキル取得」中心に学習していくと10年後に起こるパラダイムの変化に裏切られるかもしれません。テクニックに走りがちになり、本質を観察することがおろそかになる可能性があるかもしませんね。前回の繰り返しにもなりますが、時代の変化を肌で感じながら、ここの論文にあるような能力、スキルを時代に合わせて取捨選択し、実行し、消化吸収から発展的学習につなげると良いと思います。こう考えるとこれらのスキルは繋がっていますが、やはり結局は「考えること」から始まるような気がします。

以上、「2030年のスキル」の紹介でした。10年後、日本がどうなっているかはわかりませんが、少しでも自分の人生を生きることができるよう「考えること」を続けたいと思います!